戸隠の歴史

西行法師と戸隠の子供

この戸隠に修行に、あるいは参拝に訪れた人の中に、親鸞聖人や、西行法師がいます。親鸞聖人の発見したという念仏池からは、今でもふつふつと念仏を唱えるように音をたてて、奇麗な水が湧き出しています。聖人がお使いになったと言われる、「アカザの杖」も伝えられています。

 また、この地を訪れた西行法師と、戸隠の子供たちの間には、次のような話が伝えられています。
善光寺の参拝をおえて、戸隠権現に参ろうとした西行法師が、飯綱原に差し掛かったところ、蕨とりに夢中になっている子供たちを見て、からかってやろうと、「わらびにて手なやきそ」※と声をかけました。すると子供たちが西行法師の頓智を見破った上に「ひのきにて頭なやきそ」※と逆に西行法師をやりこめてしまいました。

(※)
「これこれお前たち、今わらびをとっているが、藁の火で火傷をしなさるな」
「火の気のある笠で頭を焼かないようにしてくださいよ」

西行法師は更に歩をすすめて、火之御子社のあたりまでやってきました。見事に咲いた桜の木の下で子供たちが遊んでいましたが、法師の姿を見るとするすると桜の木に登ってしまいました。それを見て法師は「さるちごと見るよりはやく木にのぼる」※と、木のうえの子供たちに声をかけました。するとその言葉が終わるか終わらないうちに「犬のようなる法師来れば」※と、子供たちにはやしたてられました。

(※)
「おやおや此処の子供は猿のようだな。と思っているまに、なるほどじょうずに木に登っていったわい」
「あなたのような何処の野良犬か判らないような見すぼらしい姿をしたお坊さんがきたからですよ。昔から猿と犬とは仲が悪いでしょう。だから猿のように木に登って逃げたのですよ」

またもやりこめられた西行法師はびっくりして、「さすが戸隠権現のお膝下にすむだけあって賢い子供たちだ。こういう土地にきてからかってみようなんて心をおこしたのが恥ずかしい。このうえ先に進んだら思いもかけない失敗をするかも知れない」と、この桜の木のもとから引き返したといわれています。その桜は、「西行桜」の名前がつけられ、物語とともに大事にされています。